小説版ミッサーシュミット

文章を書くのが大好きなミッサーシュミットの小説の数々♡

休日と犬の睡眠薬⑨

準備を終えた彼は、私の足を大きく広げさせた。原始的な欲求を、一秒も早く満たしたい。全身の毛が逆立ち、性感帯がフル稼働していた。最高の状態で彼を迎え入れようと、体が独りでに準備を始める。私は、禁断症状に襲われたジャンキーのように、哀れな叫び…

休日と犬の睡眠薬⑧

彼の限界が近付いて来たのを知り、慌ててしまう。私は今まで、この行為を、彼以外にしたことが無い。回数もそれほどこなしていないので、慣れていないのだ。 私の戸惑い察した彼は、もういいよ、と、優しく言ってくれた。ホッとした反面、その言葉を、不思議…

休日と犬の睡眠薬⑦

限界まで焦らされた後に与えられる快楽は、脳内で何倍にも強化された。 太くて長い指が動く度、固く目を閉じたまま、私は悲鳴を上げた。 執拗に、丹念に、濡れた場所を優しく探る彼の指が、突然、激しく貫いた。頭の中が、体の内側と外側が、シャンパンより…

休日と犬の睡眠薬⑥

舌が、乱暴に口の中に入って来た。顎にかかる彼の手を退かせようと、必死でもがく。彼は私の手首を掴んでそれを制止し、体重を掛けてのしかかりながら、更に強く唇を吸った。 シャンパンに酔った体は、簡単にソファベッドに押し倒された。彼は私の首筋に舌を…

休日と犬の睡眠薬⑤

三本目を飲み尽くす直前に、頼んでいたピザが届いた。玄関に来た宅配の人に、「ご苦労様」と言いながら、彼は代金の他に、チップ渡しているのが分かった。宅配の人は喜んで、何度もお礼を言った。その人はまた、この激しい雨の中を、濡れながらバイクに乗っ…

休日と犬の睡眠薬④

私に背中を向けて、ディスクをケースにしまいながら、彼がぽつりと言った。 「シャンパン、飲みたくなった」 映画の中で、ヒロインが優雅な手つきで、グラスを口に運んでいたのを思い出す。確かに、とても美味しそうだった。でも、雨の中を、買いに行くのは…

休日と犬の睡眠薬③

彼の足音が聞こえた。うたた寝をしていた私は慌てて目を開け、真直ぐ背筋を伸ばす。彼はいつの間にか、服を着替えていた。 コーヒーが注がれた、耐熱ガラス製の透明なティーカップを、両手に一つずつ持った彼は、呆れたように笑いながら言った。 「昔、うち…

休日と犬の睡眠薬②

まだ、雨は止みそうにない。 すっかり冷めたアメリカンコーヒーを、優雅な仕草で飲み干し、満ち足りた顔で彼は言った。 「じゃ、行こうか」 私が軽く頷いて席を立つと、他のテーブルに注文を取りに行っていたウェイトレスが、こちらの様子に気付いた。 「い…

休日と犬の睡眠薬①

桜もすっかり散り終わった四月の週末の午後、彼と会う約束をしていた。雨が降るから、映画の約束は変更。傘を差して、濡れながら街を歩くのが、大嫌いなのだ。 玄関のドアを出ると、さよならを告げたはずの冬の寒さが、遠慮がちな春の陽気と共に感じられた。…

どうぞあの世で しあわせに!⑩ 《完結》

「息子の、死因は、何ですか?」 恐ろしく明瞭な発音で、私は男に訊ねた。 「ただの老衰。凄く楽に死ねたみたいだよ。家族に看取られながらさ」 「幸せだったのでしょうか?」 「うん、多分ね」 「夫は?」 「ノートに名前が無いかな?」 男に言われ、急いで…

どうぞあの世で しあわせに!⑨

男は、すぐに戻って来た。彼が私の前に立つと、部屋の様子がガラリと変わった。さっきまで男がいた場所に、大きなホワイトボードが現れた。振り返ると、たくさんの座席が並んでいる。私達は、最前列の座席のすぐそばに立っていた。 「教室かな、懐かしいね」…

どうぞあの世で しあわせに!⑧

「もし、ここに居続けるとしたら、この格好のままなんでしょうか?」 思ったよりも喉が枯れていて、消え入りそうな声しか出なかった。男は、不思議そうに首を傾げながら言った。 「この格好って? 死ぬ前と同じだよ」 「そんな! だって」 「十分綺麗なのに…

どうぞあの世で しあわせに!⑦

これが、私……? すぐには信じられなかった。若さも、美しさのかけらも無かった。 容姿に対して、必要以上に奢った気持ちは抱いていないつもりだった。美容には、最低限の気配りしかしたことがない。美貌のお蔭で窮地から救い出された覚えも無いではないが、…

どうぞあの世で しあわせに!⑥

或る朝、監獄の扉の外から、法廷で会った男の声が聞こえた。普段は意識したことのない小さな隙間から、彼の衣服の発する光が入って来た。それはまるで、窓から降り注ぐ春の日差しのように柔らかかった。 気の遠くなるような時間を過ごしたようにも思えるが、…

どうぞあの世で しあわせに!⑤

「罪状を見るに……何で誰からも殺されずに済んだのか、不思議に思うくらいだね。あんた自身の悪運の強さもあるけどさ、これは、周りの人のお蔭だね。些細なことから命に関わるようなことまで、内容は色々だけど、あんたの罪を隠し通して、警察やらマフィアや…

どうぞあの世で しあわせに!④

神よ。 私は多くの罪を犯しました。 人を騙し、人のものを盗み、人の心を利用し、陥れたこともあります。 酒に溺れ、薬に溺れ、何のために生きているかも分からずに、虚しいだけの日々が、ひたすら早く過ぎてゆくことだけを願って生きていました。 苦しい現…

どうぞあの世で しあわせに!③

「そう、素直が一番。それじゃ、始めよう」 男が背筋を伸ばしたのと同時に、左右の男達が立ち上がった。彼らは私に、睨むような鋭い視線を送った後、一層強い光をまき散らしながら、どこかへと消えた。その瞬間を待っていたかのように、男は質問を開始した。…

どうぞあの世で しあわせに!②

私は生前、特定の宗教を持ってはいなかったが、天国とか、地獄とかいう場所は、存在すると思っていた。だから、死ぬのが怖くてたまらなかった。 しかし、実際に死んでから、十八年間の記憶は、一切無い。天国と地獄、そのどちらにも行けなかったのだろうか。…

どうぞあの世で しあわせに!①

肺を患い、長い間、病床にいるせいで、日にちの感覚はとうに失せていた。カレンダーを見るのは、健康な人間に任せてあった。 窓の外を眺めると、同じ夏でも、七月なら七月だけが、八月なら八月だけが持つ特別な色彩を、ちゃんと見分けることが出来る。これに…

ご訪問ありがとうございます♡

ミッサーシュミットと申します。 メインブログはこちら♡ misserschmitt2233.hatenablog.com このメインブログに詳しく書かせて頂いておりますが、性愛セラピスト養成講座(STT)を修了しました♡ 心理学の勉強にも興味津々です。 家庭環境がなかなかどうして…な…